2023年5月16日火曜日

日本語の夢と目醒め

ちょっと時間が経ってしまいましたが、歌の吉川真澄さんの新しいCD「日本語の夢と目醒め Dreaming&Awaking」昨年2022年12月23日にワオンレコードから発売されました。ハイレゾ配信もあります。

作品を作る、という作り手の情熱をひしひしと感じた大好きな作品。参加できて嬉しいし、よく家で聴いています。  

吉川さんのスーッと通る自由な歌声、今更私が言うまでもないですが、本当に素晴らしいなと思います。仏像が無数に並ぶお堂が見えたり、青空がパーッと広がったり、幼い頃に戻ったり、ずっと先の未来にいたり、時には人以外の息遣いが聞こえたり。色々飛び越えて旅をしているような浮遊感があり、位相がちょっとずれた世界へ連れていってくれます。

この作品は3人のピアニストが参加していて、平野一郎さんのモノオペラ「邪宗門」の第一部ピアノ伴奏版を河野紘子さん、武満徹さんのソングスより7曲(鷹羽弘晃さんの編曲)を水戸見弥子さん、佐藤信さん作詞、林光さん作曲の「アメリカ・アメリカ 竜の尻尾を見つけた黒い犬のことなど」を私がそれぞれ弾いています。

河野さんと水戸さんと私、3人それぞれの全く違う音が楽しめるのもこの作品の魅力ではないかな、と思います。調律をしてくださった狩野 真さんがそれぞれのピアニストに寄り添って、最高に弾きやすい状態にしてくださったからこそ。何の不安もなく最高のピアノに向き合える幸せな体験でした。有り難いな、と心から思います。  

私の演奏したアメリカ・アメリカが作られたのは1976年。佐藤さんの奇想天外、でも冷静な視点も感じる歌詞で、クスッと笑えたり、煙に巻かれているようだったり。ジャズピアノもお好きだったという林さんの自由な精神が手書きの譜面から立ち上ってくるようでした。

ワオンレコードエンジニアの小伏和宏さんと邪宗門の作曲家の平野さんが丁寧に録音を進めてくださって、自由に行ける所まで行っていいよ、新しい風景見てきていいよ、と背中を押してくださり、これ以上ない幸せな状況で吉川さんと曲の世界を旅することができました。

録音もブックレットも含め、職人の技とどこにもない音世界が詰まった作品、是非多くの皆様に聴いていただきたいです。